2013年5月29日水曜日

ノバルティス(ディオバン)事件について

一部新聞やメディアでは取り上げられているものの、橋下発言の陰に隠れてしまった感がある問題です。簡単にまとめると、「製薬会社の社員が身分を隠して、(複数の)大学の研究に共著者として参加し、自社の薬の有用性に関する論文を発表した。しかしその内容(データ)に虚偽があるのではないかと指摘されている」という問題です。この問題で重要なのは、利害関係者が研究に深く関わっていること、データ捏造の疑いがあること、そしてこの論文の結果を薬の宣伝に使っていたことです。
利害関係者の研究への関与は、利益相反として論文に記載すべきなのに、書いていなかったようです。海外の有名雑誌では特に厳しくチェックされるので、意図的に避けたと思われます。しかもデータの統計処理に関わっていたことを隠したのは、データ捏造疑惑に関わるからだと、勘ぐられても仕方ありません。
研究や実験に携わると、どうしても思い通りの結果が得たくて、ついデータをいじりたくなるのは、個人的にも分かりますが、研究者としては失格です。原著を実際に見ていないのでメディアの情報に依りますが、この降圧剤の服用で脳梗塞などのリスクが下がるとの内容だったようです。血圧を下げる→疾患リスクを下げる、ことは一部正しくても、疾患リスクは血圧以外の要因も絡んでいるので、有意差を持たせるのはかなり大変と想像されます。研究の設定に元々無理があったのでは?と思います。
そしてこの結果を宣伝に使ったということ。宣伝目的が先にあって、都合のよいように研究結果をねじ曲げた、と疑われることにつながります。当の大学教授、会社員とも辞任しており、暗にこれらの疑惑を認めた形になっています。製薬会社、大学病院(教授)の間の黒い関係が 浮かび上がります。未だ「白い巨塔」の世界のまま。
私もディオバンを処方しています。降圧効果はあると思われるからですが、今回の事件で疑惑の目が薬そのものに向く可能性もあります。会社は信頼を裏切っただけでなく、関係のない医師、薬剤師、そして患者さんたちまでも裏切ったことになり、その責任は極めて重いと考えます。

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