2013年7月9日火曜日

健診は何のために

ほぼ恒例となった松本市の特定健診が始まりました。9月30日までです。
ちょっと前に患者さんと話していて、今年は人間ドックを受けるが、某施設では半年先の予約しか入らなかったと、聞きました。どこの施設(病院)も人間ドックはやりたいので、営業活動が盛んです。企業と契約すれば、ある程度の人数が確保できて収入もあがるし、一般診療と違って自由に値段も決められる。言い方は悪いけどおいしい商売です。だからどこも必死に企業勧誘するので、個人ではなかなか予約が取れないのでしょう。
ドックの受診者が増えれば、当然異常が見つかる人も増える。「要治療」までいかなくても再度精密検査で受診してもらえば、外来患者が増えるメリットもあります。もちろん、純粋に健康診断が第一の目的でしょうが。
今年の特定健診から検査の正常値が一部変更になっています。健診全体の検査正常値(基準値)は下がる傾向です。要は「異常値に近い」人を早めにピックアップして、「生活指導」を行うことで治療にかかる前に治そうということです。実際そういう指導をしている所も多いでしょうが、一方では「基準値が下がる」→「異常値の人が増える」→「病気」と短絡的に診断して、「高脂血症」「肝機能障害」「腎機能障害」などの「患者」が増えていく可能性も十分にあります。「生活指導」よりも「薬」飲む方が楽と考える人もいるでしょうし、医療者側も患者が増えるわけなので、「ちょっとおいしい」。これでは医療費を逆に増やす方向につながるんじゃないかと考えてしまいます。発想が「近藤誠」的で嫌だけど、実際に厚労省が考えるような「正しい」方向に向かっているのか分かりません。
 以前も書きましたが、当院ではあくまでも「生活指導第一」で考えています。 もちろん合併症の多い方には薬の治療を勧めることもあります。
また一方では、健診で「要治療」や「要精密検査」になっても、翌年そのまま受診する人もいます。1年前と何にも変わってないか、悪くなっているのに。果たして健診する意味があるのでしょうか? 誰のため、何のための健診か、しっかり考えてほしいと思います。